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サンゴ礁生態系と環境変動
サンゴ礁生態系と環境変動
サンゴ礁は我々人間に対して、癒しや食料資源など多くの恵みをもたらします。しかし現在沖縄をはじめ、世界中で、サンゴ礁生態系の存続が危ぶまれています。ではなぜこのように世界のサンゴ礁は不健全な状態になってしまったのでしょうか?
その原因の一つとして、私たち人間の日々の活動による海洋環境の急速な改変が考えられます。道路や沿岸開発、生活排水の増加による過剰な栄養塩や有機物の供給は、サンゴ礁生態系や生物に多くの影響を及ぼします。さらには、近年「温暖化」や「酸性化」など、気候変動に伴う地球規模レベルでの環境の改変が急速に進みつつあります。海水温の上昇によるサンゴの白化、海水が酸性化による、ウニやサンゴなどの石灰化形成が阻害の可能性が指摘されています。
そこで我々は現在進行しつつある海洋環境の変動が、琉球列島、さらには世界サンゴ礁に生息する生物や生態系に対して,どの程度、どのように、なぜ影響を与えるのかということを野外調査や室内、野外実験により評価するし、将来のサンゴ礁生態系予測、さらにはその保全に向けた対策に資する科学的な知見を得ることを目的として研究しています。
研究テーマ:
気候変動(海洋酸性化/温暖化)がサンゴ礁生態系に及ぼ影響の評価
サンゴ礁の水質環境とサンゴ礁生物の関係
沖縄県硫黄鳥島沖での高CO湧出海域での酸性化影響評価
陸域開発による堆積物によるサンゴ礁への影響
藻場によるCO2の吸収(ブルーカーボン)
パラオ、ニッコー湾での天然高水温/高CO2環境
気候変動下でのサンゴ礁による台風防波堤機能
など
現在、大気中二酸化炭素濃度の増加に伴い、地球規模での酸性化の進行している。海水が酸性化するとさらに海水中の炭酸カルシウム飽和度が低下することから、特にウニ類や貝類、サンゴ類,甲殻類などの石灰化生物への影響が懸念されている。これら生物は水産学的にも生態学的にも重要な生物種であるため、海洋酸性化の実体と生物へのリスク評価が欠かせない。しかし現状では、沿岸域での炭酸系の実測値はほとんど無く、日本国内沿岸での酸性化の実態は把握されていない。沿岸域は、外洋域に比較して生物生産が高くさらに河川などの影響も受けることから、海水の炭酸化学環境は季節や場所によっても大きく異なる可能性がある。
そこで、我々の研究室では、まず国内沿岸での酸性化の実体を解明するため、日本全国の沿岸域の炭酸化学環境の観測網の確立をめざしてる。
現在、沖縄本島沿岸(瀬底島)、東京湾(館山沿岸)、宮城県(志津川湾)および北海道(厚岸湾)での連続モニタリングを行っている。
第二に海洋酸性化が特に水産重要種(ウニ類や貝類など)に及ぼす影響の評価を目指している。
さらにこれら研究を踏まえて、持続的な水産業の確立を目指し、酸性化影響の緩和策の提案を目指している。
国内沿岸における海洋酸性化のモニタリングと水産生物へのリスク評価及び緩和策
サンゴ礁の生態
サンゴ礁域は海洋生態系の中でも最も生物多様性が高く、実に多くの魅力的な生物たちが生息しています。しかし多くの生物の生態や発生などはいまだ多くの謎に満ちており、明らかにされていないことが数多くある。本研究室では、サンゴ礁に生息するさまざまな生物を対象に、その発生や生理,生態学的特性を明らかにし,これら生物の生態の理解を目指しています。
テーマ:
ソフトコーラルのなぞ
ソフトコーラルはサンゴの一種であるが、八放サンゴに属し、イシサンゴとは異なり硬い骨格を持たない。一方でイシサンゴと同様に、褐虫藻類と共生し、サンゴ礁域にごく普通に見られる。しかしイシサンゴに関する研究は多くされている一方で、ソフトコーラルは未だ多くの謎に満ちている。例えば、ソフトコーラルはいつ産卵するのか、どのような環境を好むのかなど未だ多くの謎に満ちている。また近年沖縄では、イシサンゴが減少している一方で、ソフトコーラルの被度が増加しているとの観察結果が報告されている。さらに沖縄県硫黄鳥島沖で発見されたCO2湧出海域では、イシサンゴは全く生息していない一方で、ソフトコーラルが極めて高い被度で生息していることが発見された。そこで現在はソフトコーラルのさまざまな謎を解き明かすべく、繁殖に関わる研究や生態学的研究などを実施しています。
アオサンゴの不思議
アオサンゴは、ソフトコーラルと同様八放サンゴに属し、特徴として青い骨格を持つことで知られている。本種には、形態的に異なるタイプや異なる生息環境を好むタイプが存在することが知られていたが、長らく1種であるとされてきた。しかし、最近の分子生物学的研究より本種には幾つかの隠ぺい種が存在する可能性が明らかにされてきた。そこで、これらアオサンゴの各種タイプの生理生態学的特徴を解明し、本種の生態を明らかにすることを目指している。
サンゴの粘液
サンゴは常時多量の粘液を放出しており、それによって堆積物を除去したり、さらにUVから保護、傷の保護などをしているとされている。一方で、海水中に放出された粘液は、周辺の生物の重要な餌資源となっている可能性が指摘されている、サンゴ礁の物質循環に重要な役割を果たしている可能性がある。しかし、実際にサンゴがいつ、どのくらい粘液を放出し、それはサンゴにとってどれだけのコストになっているのかなど未だ多くの点が謎である。そこで、サンゴ礁の炭素循環の理解を深めることを目的にサンゴの粘液に注目し、研究をすすめている。
海草藻場
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